スマホで商売繁盛

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スマホで商売繁盛

2024年6月11日
ケニア、ナイロビのダウンタウンの賑やかなマーケット風景。 写真:ムワンギ・キルビ/IFC ケニア、ナイロビのダウンタウンの賑やかなマーケット風景。 写真:ムワンギ・キルビ/IFC

概要

  • アフリカの起業家たちは金融サービスやスマートフォンへのアクセスが限定されているため、彼らのビジネス成長やデジタル・インクルージョンの妨げとなっている。
  •  IFCは、2023年5月のM-KOPAへの5,000万ドルの融資を通じ、スマートフォンの普及を図りつつ、社会的にプラスのインパクトをもたらすジェンダーやデジタル、金融の包摂性を促進することで金融とデジタル機会の拡大を図るという彼らの使命を支援している。
  • 現在までに、M-KOPAは、ケニアのスマートフォン組立工場で雇用を創出する一方、400万人以上の顧客にスマートフォンとデジタル金融サービスを提供している。

 

  • 5,000万ドル相当
    2023年5月、IFCがM-KOPAケニア社にマルチカレンシー・ローンを提供
  • 100万台
    M-KOPAの現地工場で組み立てられるスマートフォン数。同社には300人の新卒社員も入社。

ケニアで女性が経営する中小零細企業の成長機会の拡大を図る、IFCとフィンテック企業M-KOPA社とのパートナーシップ

文:タリア・ホームズ、デヴォン・メイリー


レジーナ・ムジョカは、ケニアのナイロビ市内の屋台で1日平均2足の靴を売っていた。

今ではスマートフォンを使って5足の靴を販売し、ソーシャル・メディアを通じて新たな顧客を開拓したり、モバイルマネーで支払いを受けたり、追加在庫を購入するための借り入れも利用できる。

衣服や靴、電化製品の販売で自身と4人の子供の生計を立てているムジョカにとって、これまでは往々にして手持ちの現金に余裕がなかった。彼女は、ソーシャル・メディアを使って商品を販売すればビジネスを拡大できるとは思っていたが、高性能のスマートフォンを購入するための資金を貯めることができなかった。

レジーナ・ムジョカ レジーナ・ムジョカは、M-KOPAのスマートフォンが彼女のビジネスを変え、成長を促したと確信している。写真:ムワンギ・キルビ/IFC

しかし、彼女のビジネスはM-KOPAを知ってから一変した。アフリカのフィンテック企業M-KOPAは、ケニア、ガーナ、ナイジェリア、ウガンダ、南アフリカで、マイクロペイメントを通じて顧客がスマートフォンや電動バイクなどの生産資産を購入できるようにしている。また、デジタル・ローンや健康保険といったデジタル金融サービスも提供している。

M-KOPAを通じ、ムジョカは少額の保証金を支払って、スマートフォンを初めて手にした。彼女は過去12ヶ月間にわたり、スマートフォンを使ってフェイスブックやWhatsAppに商品の写真を載せるなどして顧客を開拓し、ビジネスを広げながら少しずつ残高を分割払いで返済している。

「スマートフォンのおかげで、ビジネスは好調だ」とムジョカは語る。

ケニアのナイロビに住むもう一人のM-KOPA携帯ユーザーのフランシスカ・エンドリは、このプラットフォームを通じて購入したスマートフォンのおかげで、毎月の収入が50%以上増えた。エンドリはナイロビの別の市場でも靴を販売していて、WhatsAppとモバイルマネーを利用すれば全国で事業を展開することも可能だ。

「子供を学校に通わせたり、課外活動の費用を支払うことができるようになった。まだスマートフォンを持っていない人には、ぜひ持つように勧めたい」と、屋台で働くエンドリは語った。

Francisca Endoli.

フランシスカ・エンドリは、M-KOPAのスマートフォンの潜在力を活用し、月収が50%アップした。 写真:ムワンギ・キルビ/IFC

携帯へのアクセスが、金融へのアクセスに

ケニアでは、女性が経営する中小零細企業(MSME)のうち、正式な融資を受けられるのはわずか7%と推定され、彼女たちは事業拡大に苦労するだけでなく、事業の継続すら難しい。

しかし、わずかな与信枠が彼女たちの運命を大きく変えることがある。小規模企業が融資を受けられるようになれば、成長を促す投資機会を活用しやすくなることは調査で明らかになっている。それこそが、IFCがM-KOPAホールディングスと提携し、ムジョカのような女性のための金融アクセスを拡大した理由のひとつである。

「M-KOPAと協力してデジタルと金融の包摂性を強化することで、この地域のより多くの人々に経済的機会をもたらすことができる。スマートフォンのような商品へのアクセスは、利用者を他の金融サービスや医療、教育資源につなげる重要な手段となる」と、IFCの東アフリカ地域担当金融機関グループ・マネージャーのジェスマン・チョンジは語る。

M-KOPAは、融資実績や通常の担保がない個人にも商品を提供し、時間をかけて小口の分割返済ができるようにしている。スマートフォンを購入して返済が順調な優良顧客はアップグレードが可能で、M-KOPAのSIMUPESA商品を含む追加商品も入手できるようになり、現金融資も可能となる。

IFCは2023年5月、M-KOPAケニア社に5,000万ドル相当のマルチカレンシー・ローンを提供した。この融資枠は、M-KOPAが東アフリカの銀行口座を持たない消費者に金融サービスを拡大し、何十万人もの低所得層や農村地域の顧客、そしてムジョカのような女性が生産資産を購入し、デジタル経済に接続できるように支援している。

現在までに、M-KOPAは10億ドル以上の融資を行い、市場全体で400万人以上の顧客にデジタル及び金融包摂をもたらした。特筆すべきは、顧客の2人に1人が収入を得るためにM-KOPAのスマートフォンを利用し、そのうち82%が収入が増えたと報告していることである。

M-KOPAはまた、ケニア初のスマートフォンの組立工場を設立し、2023年の立ち上げ以来、100万台のスマートフォンを現地生産している。また、この工場では300人の新卒者をM-KOPAの社員として雇用し、そのうちの70%にとって初めての就業機会となっている。

「IFCと金融機関からの資金調達により、私たちはアフリカ全域の低所得層の消費者に生活向上を図るコネクテッド製品を提供することで、現在のインパクトの規模を拡大・倍増させることができる。これは、ジェンダー、デジタルと金融の包摂性を向上させる上での制度的な障壁に対処するため、より良い環境と社会的インパクトを促進するという当グループのコミットメントをさらに強化するものだ」とM-KOPAのジェシー・ムーア最高経営責任者(CEO)は語る。

IFCとのパートナーシップの下、M-KOPAは環境、社会、ガバナンスに関する具体的な目標にもコミットしており、これには女性向けのスマートフォンの販売台数や与信供与額に関するコミットメントも含まれる。

モバイル業界団体GSMAの試算によれば、サハラ以南のアフリカでは女性のスマートフォン所有率は男性より30%低く、このコミットメントはスマホ格差の縮小にも役立つ。

また、IFCとM-KOPAのパートナーシップは、経済活動の拡大への貢献も期待される。2023年のM-KOPAのインパクト・データによると、200万人以上のM-KOPA顧客がスマートフォンを利用してデジタル経済への参入を果たした。特にケニアでは、M-KOPAは女性のスマートフォン利用者を40%近くまで増加させ、他の市場でも男女格差に対応する取組みも計画している。