マダガスカルの古代牛を守る現代的なタグシステム

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マダガスカルの古代牛を守る現代的なタグシステム

2022年5月4日

共著:フアゾ・ガンダワイア、ジェイソン・ホップス

ゼブ牛(コブウシ)は、マダガスカルの文化と経済において主要な役割を演じている。一頭数百ドルで取引される肩に独特のこぶを持つこの牛は、牧畜民やその家族、そして時にはインド洋に浮かぶ島のコミュニティ全体の生活を支えている。

人口の大部分が1日2ドル未満で生活している貧しい国では、残念なことに貴重なコブウシは、地元で「ダハロス」と呼ばれる窃盗犯の標的になっている。

マダガスカル政府の推計によると、2018年から2020年の間に約60,000頭のコブウシが盗まれ、勤勉かつ献身的に働いてきた牧夫たちの歳月だけでなく、彼らの収入源も奪われてきた。

しかし現在、日本政府の支援を受け、IFCがマダガスカルで展開するアグリビジネス・プロジェクトを通じて提供するタグ付けとオンライン識別プログラムが、家畜の保護に一役買っている。

2021年後半、マダガスカルのアンドリー・ニリーナ・ラジョエリナ大統領は、同国の最貧地域でもある南部の4つの地域において、試験的な家畜識別・トレーサビリティ・システム(LITS)を正式に立ち上げた。

LITSプロジェクトは、2023年までに80,000頭のコブウシのタグ付けを計画しており、試験の初期結果が有望な場合は、島全体でさらに数十万頭のタグ付けを進める予定だ。

「このシステムは、コブウシの盗難対策としても、家畜の健康状態を詳細に記録しておくためにも不可欠である」と、マダガスカルのハリフィディ・ラミリソン農業畜産大臣は語る。 「IFCや日本政府の協力を得て導入したこのシステムは、家畜売買の手法に変革をもたらし、牧畜民の収入が増加するとともに、肉牛畜産業に家畜の健康管理と経済的利益という恩恵をもたらした。」


アノジー地方のアンカラムナで試験プロジェクトの立ち上げを視察するアンドリー・ニリーナ・ラジョエリナ大統領

ゼブスカン

このタグシステムの仕組みは簡単だ。コブウシの耳に、改ざん防止機能が付いた個別識別番号のタグが取り付けられる。ID番号のタグは、オンラインデータベースにつながっており、その牛の写真や健康状態、識別情報の詳細を管理する。

このプロセスは、スマートフォンに搭載した「ゼブスカン」と呼ばれる特殊なソフトウェアで管理している。コブウシが盗まれたり、いなくなったりした場合(家畜の所有権は地元の役人によって確認されている)、ブリーダーはまず警察あるいは保健サービス局に報告し、彼らがデータベースに入力する。すると、関係当局に知らせるSMSが自動的に配信されるようになっている。

このシステムの本当の威力は、マダガスカルに点在する動物検疫所や市場、その他の販売が可能な店で発揮される。このシステムのおかげで、関係当局は個体を特定し、データベースで盗難報告が出ているかを調べることができる。

「この新しいオンラインシステムは、改ざんが容易だった古い手動システムに取って代わる」と、IFCのシニア・オペレーションズ・オフィサーであるアミーナ・ハイレド・エル・ゼイタンは語る。 「新しいシステムでは、コブウシの所有権を変えることはできず、オンラインデータベースを使用して情報を確認しない限り、市場で販売することはできない。」


21世紀の抜本的な改善

同様のタグシステムの成果は、ヨーロッパや米国、その他の地域で既に証明されている。アフリカでは、ナミビア、ボツワナ、ケニアなどの国々が家畜のタグ付けで先行してきた。

マダガスカルでは、IFCは、システムの実装と運営に際し農業畜産省に助言を行い、政府が紙ベースのID管理から移行するのを支援してきた。

新しいシステムはマダガスカルで概ね好評であったが、牧畜民の中にはその機能について懸念を持つ人もいた。 そこで、IFCは、タグシステムとその利点について丁寧に解説する説明会を通じて、彼らの懸念を軽減する支援を行っている。

「耳につけるタグはより信頼性が高く、自分のコブウシにつける動機になった」とLITS試験プロジェクトに参加したマダガスカルの畜産農家であるマラ・ツァララヒは語る。 「このタグのおかげで、所有者の名前を含め全ての情報がデータベースで管理されているため、盗まれたコブウシを追跡できる。」

マダガスカルのモンガイキー村近くでコブウシの群れを放牧する少年

より広範な戦略

タグシステム・プロジェクトは、マダガスカルの畜産業の強化を支援する世界銀行グループのより広範な戦略の一部であり、獣医サービス、牧草地、さらには動物の繁殖や飼育の改善も含まれる。

日本は、世界農業食糧安全保障プログラム(GAFSP)を通じて、このコブウシのタグシステム試験プロジェクトに最大95万ドルの資金支援を行っている。このプロジェクト以外にも、日本政府は、アグリビジネス、サプライチェーン、保健、インフラ、金融包摂、中小企業およびその他のセクターを対象とした世界中のアドバイザリー・プロジェクトを支援する主要なIFCパートナーのひとつである。 

マダガスカルで同プロジェクトを主導する人々は、今後、現在のタグシステムに簡単に組み込むことができる地理位置情報機能を追加する可能性があると語る。

「このようなタグシステムのような単純な改善が、一般の人々の生活に劇的な影響を与える可能性がある」と、マダガスカルのIFCカントリー・マネージャーであるマルセル・アヨは語る。 「テクノロジーは万能薬ではないが、その応用は長年の問題を緩和し、1頭や2頭の家畜を飼育する生活を営む人々に安心をもたらすことができる。」

2022年5月発行