アゼルバイジャンにおける石油パイプライン事業

Case Study

アゼルバイジャンにおける石油パイプライン事業

2004年2月20日

プロジェクト概要

  • 事業主体:バクー・トビリシ・ジェイハン(BTC)・パイプライン・カンパニー社
  • 所在地:アゼルバイジャン共和国、グルジアトルコ共和国
  • 調印年月:2004年2月
  • スポンサー:BP、AzBTC、伊藤忠商事、国際石油開発帝石(旧国際石油開発)など
  • 参加公的機関:JBIC、EBRD、NEXIUS-EXIM、ECGD、COFACE、Hermes、SACE、OPIC

 

投融資の概要

本案件は、アゼルバイジャン、グルジアおよびトルコを結ぶ1,768kmのパイプライン(輸送能力120万バレル/日)敷設に際するプロジェクト・ファイナンスです。

同地域で最大(総プロジェクト費用約40億ドル以上)の外国資本案件であり、これによりカスピ海原油をトルコ海峡を経ずに、地中海へ輸送できるようになりました。

IFCは2004年2月、BTCパイプライン・カンパニー社との間で、1億2,500万ドルを限度とする自己勘定融資(Aローン)契約、および1億2,500万ドルを限度とする協調融資(Bローン)契約(幹事行:みずほコーポレート銀行ほか)に調印しました。

本プロジェクトは、BP社により運営され、国際石油開発帝石、伊藤忠を含む国際コンソーシアムが出資しています。これらの日本企業は、アゼルバイジャンの石油上流開発にも携わっており、本プロジェクトは、日本にとって更なる資源の安定供給源として期待されます。
chart oil pipeline

 

 

投融資の背景

アゼルバイジャンは、豊富な石油源を有する一方、原油輸送が大きな制約となっていました。また、利用が多く環境面で懸念のある従来の輸送ルート(トルコ海峡経由)の代替として、本事業が推進されました。

一方、パイプラインは3ヵ国、534の村におよぶ大規模なものであり、建設に伴う影響について、環境・社会面でさまざまな配慮が必要でした。

IFCは、プロジェクトの社会・環境面において、持続可能性の向上に重要な役割を果たしました。

 

IFCによる開発効果

 

経済への影響

  • 新たな輸送手段で原油を世界市場へ安定供給
  • 陸地に囲まれたカスピ海地域の経済を活性化(地域でのモノ・サービス交易促進、中小企業の育成など)

社会への影響

  • エネルギーの安定供給
  • 地域コミュニティでの雇用や従業員訓練プログラムなどの機会創出
  • 各国政府の税収増
  • 共同事業により、各国政府の協力体制を構築。地域の安定化に貢献

環境への影響

  • 環境負荷が高く、安全面に懸念のある従来の原油輸送ルートを代替
  • 大規模なインフラ建設に鑑み、環境に及ぼす影響に十分に配慮

 

環境・社会面での持続性におけるIFCの貢献

  • 本案件は、インフラ建設としては世界最大のクロスボーダー事業となりました。そのため、建設時に大規模な土地取得に伴い、環境・社会面での影響が懸念されました。
  • また、3カ国に亘る大規模事業で数多くの利害関係者が関与する上、地政学的考察、地盤災害予測への配慮などの制約から、ルートの選定は困難を極めました。/span>
  • 環境・社会面への影響を最小限に留める様々な試みがなされたなかで、IFCの知見が活用されました。本事業は、環境・社会面での配慮について、国際的な優良事例となりました。

 

環境・社会アセスメント、コントラクター・マネジメント:

IFCは環境・社会的配慮について、優良事例をBTCに紹介。労働、就業環境、コミュニティ・ヘルス、安全などの項目を評価基準に追加。

 

地域レビューの実施:

IFCの提案により、地域レベルの課題を分析・協議する場(1)を設置。

 

公開協議と情報開示:

地域コミュニティへの影響について独自に評価するため、「マルチ・ステイクホルダー・フォーラム」をEBRDと共催。

 

土地取得と補償:

土地取得や再定住計画・補償の詳細を明瞭化。情報開示を促進。

 

コミュニティ投資:

BTCの共同スポンサーと連携し、本プロジェクトに関わる中小企業・コミュニティを対象とする開発プログラムを支援。

 

 

注:
1. パイプラインのルート選択、地域の雇用、サプライチェーンマネジメント、貧困と不平等、気候変動、ガバナンス、人権など多岐に亘る議題を協議

日本企業との協働案件

豊田通商/1995年

パキスタン:発電事業